K-POP // コリアンポップス

表現力や動機に感銘を受けたK-POP BEST

治情勢や反日感情がメディアで大きく取り上げられることも多く、韓国・韓国人へのイメージから苦手意識を持つ方もいるであろうこのK-POPというジャンル。音楽的にも電子的な音楽・流暢とは言えない日本語歌詞などから好んで聴かないという人や、その他の理由で、という人ももちろんいるだろう。これは当然K−POPに限った話ではないはずなのだけれど、他ジャンルと比べると国内だけでも好き嫌いが露骨に出るジャンルではないだろうか。

私自身も最近何を聴いているか、という友人との会話で盛り上がっていた際に、K-POPアーティストの話をした途端、尽くスルーされることもあった。もちろん、K-POPアーティストの反日発言などは非常に残念に思ったりもするけれど、韓国という国の教育事情などと、音楽作品の背景を一緒くたに考えるのは個人的には少し違う気がしている。

これまで私自身が聴いてきたK-POPというジャンルの中でも、特に表現力や動機に感銘を受けた楽曲にフォーカスしてみる。色眼鏡で見ず、純粋に聴いてみて欲しい楽曲ばかり。こういったややセンシティブな分野だからこそ、なかなか見えづらい部分でもあるアーティスト達の信念や音楽との向き合い方を知って頂きたい。

先入観や偏見をテーマに作られた作品
Random / Lee jin Ah

愛らしいソフトな声とは対象的に、展開が独創的でかつパワフルなピアノを奏でるアンテナミュージック所属のシンガーソングライター、イ・ジナ。本人はこの声にコンプレックスを持っているとインタビューで答えていたけれど、個人的には唯一無二のオリジナリティと期待を裏切りまくる楽曲展開の面白さなどから、毎回作品を楽しみにしているアーティストの一人。

 

イ・ジナというアーティストの存在を知ったのはSME(S.M.Entertainment)のデジタル公開音源チャンネル「STATION」で、SHINeeONEWとコラボしたStarry Nightだった。この楽曲もイ・ジナが作詞作曲に携わり、またONEWの声と相まってとても美しいハーモニーとおしゃれなモダンジャズに魅了される楽曲。

今回ピックアップしたRandomというアルバムについても、「偏見を捨てたくて作った歌。ランダムプレイで曲を聴いて、期待していなかった曲が良く感じた。アーティスト名を見て偏見を持って曲を聴いていたようだ」とアルバムインタビューで話している。また、「7曲が収録され、すべての曲を異なる色にしようと作った。ぜひランダムプレイで聴いて頂きたい」とアルバムについても話している。通常であればアルバム1枚の流れを熟考した上で、曲順を設定しているかと思われるが、ランダムで聴いて欲しいと言えちゃう潔さやアルバムコンセプトも斬新で面白い。

音楽を提供する側であるイ・ジナでさえ、アーティスト名を見て偏見を持つことがあるのだから、やはり先入観や偏見を捨てきることは容易ではないが、意識をするということだけでも知り得なかった音楽の幅広さをもっと知ることができたり、思い込みや決めつけでの好き嫌いや視野の狭さに気付けたら、感動することができるきっかけは、これまで以上に増えるのではないだろうか。

才能ありすぎる若き兄妹ポップデュオ
RE-BYE / Akdong Musician(AKMU)

韓国アイドルの絶対王者、BIGBANGが所属するYGエンターテインメントに所属する兄妹ポップデュオであり、BIGBANGのグループコンセプトとは完全に対照的にあるAKMU。 現在、兄のイ・チャンヒョク(Lee Chanhyuk)は2017年9月頃から海兵隊に入隊中。

22歳という若さで作詞作曲・ボーカル・ギター・ラッパー・プロデューサーまでマルチにこなす多才ぶり。妹のイ・スヒョン(Lee Suhyun)は、ボーカルとサブラッパーでもあるが驚くほど声が伸びやかで19歳という若さでありながら圧倒的な歌唱力の持ち主。過去にも「200%」という楽曲にて、6ヵ国のiTunes Storeチャート1位を獲得しているという恐るべき兄妹デュオ。

AKMUを知るきっかけになったのがこの、「RE-BYE」だが、2016年リリースなので兄(19)、妹(17)でこのクオリティ。正直ビビる。笑

 

韓国音楽業界では有名な若い頃からの技術的訓練は十分に受けているとはいえ、兄妹こそのハーモニーの美しさや歌唱力、ダンスのシンクロ具合を含め技術・表現力共に異常に高く、聴き手に安心感すら与える。10代でなぜここまでの貫禄があるのか。それもすごい。

また、若い彼らは既に一人の人間としての意思をはっきり持っているところにも感動したポイントの1つ。韓国ではポピュラーな整形だが、芸能人という職業でありながらYGエンターテインメントと契約する条件として「今がベストだと考えているため整形はしない」ことを求めたということも有名な話。整形に関しては女性である妹側に特に意見の追求があったりもしたわけだが、「私のありのままの姿で、私だけの魅力をたくさん探して、私そのものがきれいに見える人になりたい」「鼻は穴が空いていて息ができることに感謝している」と話し、整形手術を絶対に受けないと断言している。

個人的に整形に対してはなんとも思わないけれど(どちらかというとやってもいいんじゃない?くらい)19歳という年齢でここまで自分の考えや意思をしっかりと持ち、世の中へ発言する強さに敬服。こういった勇気ある発言や意思が、音楽にも何かしらの形で作用しているからこそ魅力を感じるのだろう。

近年ではSpring – Winterとアルバムを出しているが、Winterのアルバムダイジェストであるショートムービーもあるのでぜひ興味がある方はご覧頂きたい。撮影現場は日本(北海道?)のようで、兄妹の仲の良さにほっこりすることができる。

社会を注視し問題を捉え続けたアイドル
She is / JONGHYUN(SHINee)

私よりずっと音楽トレンドに敏感な母の影響で好きになったアイドルグループ、SHINee。グループではメインボーカルを務めるジョンヒョンだが、グループよりもソロの作品を個人的に好んで聴いている。その中でも特にメッセージ性が強く、世情に対する思いがより強く感じられた作品として「She is」という楽曲を挙げる。

 

この曲、歌詞の和訳をみるとラブソングかと思いきや、色々調べていたらこちらのサイトへ行き着いた。内容を見るとどうやらそうでもないようだ。上記のサイトは韓国語解説してあるため、翻訳して読むか日本語訳してくださっている方がいたのでこちらもリンクを貼っておく(画像解説はなし)

歌詞の中には、君の小さな目や君の濃い眉毛といった体のパーツを指す言葉が出てくるが、こちらは女性からすると、小さな目や濃い眉毛は外見的なコンプレックスにも直結するもの。だが、この歌詞の中では、” 他人の目からどう見えるかは気にしないで ” というフレーズやそのパーツに好意を示す言葉が含まれている。ありのままで大丈夫というようなニュアンスを伝えているようにも感じ、女性はこうであるべきといったような偏見を持たない平等な社会を連想させる要素が多く込められていることを伺うことが出来る。

そして、ミュージックビデオでは自らが偏見を持つ人を演じ、社会的偏見が解けていく一人の男性を様子を表現していると解釈している人も多い。こういった重く深刻な問題に対するメッセージを音楽にのせ、1人の音楽家として世間に伝える勇気や発言力にとても感銘を受ける。

その他にも彼はSNSで、やや間接的にメッセージを発信することも多かった。Twitterのアイコンが、ベトナム戦争抗議中にペンタゴン警備員の銃剣に花を植えるJane Rose Kasmirの画像だったり、一部勢力が同性愛嫌悪を主張し、同性同士の婚姻届が受理されなかったことによる性的マイノリティーに対する人権問題への訴えが書かれた大字報をアイコンにしたりなど、人気絶頂のアイドルという立場でありながら世界の問題を捉え、自分に何が出来るのかをしっかり考えていたり、自らの発言に対する影響力を知っているからこそ行動や作品に込めてきたものも多かっただろう。

今回プレイリストにピックアップしているRewindは、ジョンヒョンが最後に残したアルバムに収録されている曲。この中に「いち、に、さん、もう1回だけ」という日本語の歌詞が入っている。この曲にどんな思いを込めたのかはわかっていないが、何カ国かの言葉が入っている。その中でも、日本語が使われているってだけでKBS(韓国の公共放送局)は、この曲を放送不適格と判断したそう。通常なら歌詞の内容に対してこういうことがあるらしいんだけど、今回は日本語が使われているというだけ。若い音楽家が率先してこのような行動を起こしていることに対して、やはり残念に思ってしまう。

今後の世の中を作っていくのはこういった若者のはずなのに、27歳という若さでこんなに素晴らしい才能と優しさを持った音楽家のパフォーマンスを今後もう見ることが出来ないことを非常に残念に思う。これまで届けてくれた作品達に感謝し、ずっと大事に聴いていこうと思う。ご冥福をお祈り致します。

男性に負けない韓国女性ラッパー
LOVE TALK / KISUM

日本にも女性ラッパーというカテゴリに属するであろうアーティストは存在するけれど、比較的サブカル寄りの位置にいることが多いというのが個人的なイメージ。比べるものではないけれど、ダンスやラップ、特に女性ダンサーや女性ラッパーなど、日本ではあまり日の目を見ることがなく、活躍しづらいのが現状ではないだろうか。

韓国は国際的に通用するアーティストを育てるという姿勢をわりと強く感じるので、洋楽にかなり影響を受けている点からも、可愛さを売りにしているというより事務所で幼い頃から実習生としてバキバキに育て上げられているか、オーディション番組などで選び抜かれた実力派がデビューをする傾向がある気がしている。

そのため、女性ダンサーや女性ラッパーは日本と異なり、メジャーでバリバリ活動しているし、洋楽から影響を受けまくったキレッキレのダンスやラップだったりもするのではないだろうか。今回紹介する若手ラッパーKISUMもまた、オーディションを勝ち抜いた実力派のひとり。飾らないサバサバしたユニークな性格も魅力的だが、ラップが苦手な人でもきっと聴きやすいと感じるマイルドな彼女の楽曲もまた魅力。

 

韓国では女性ヒップホップが女性嫌悪の対象になっているという記事もある。KISUMもまだ20代前半なので、こういった韓国音楽界の闇の中でも光り続けて欲しいと願う。韓国はより音楽がビジネス的な面が強いから、日本よりも自由な表現をしづらいというのはあるのかもしれないな、なんて感じたりもした。

今回はK−POPに焦点を当てた。今回は本当に選ぶのが難しかった。K-POPはいい曲が特に多い。ただ今回とりあげたK-POPなんかに対しては特に、先入観や偏見を持って音楽を聴いてしまうと、自分自身の間口をかなり狭めてしまう。これを読んでいる人の中にも「J-POPがつまらない」と感じている人もいるだろうと思う。確かに私自身もあまり積極的には聴かなくなってしまった。

だが、音楽をどうやったら面白く聴き続けられるかをやはり自発的に行っていなければいけないのではないかと思うし、聴き手がただの受け身だと、やはりこの市場は面白くなっていくことはないだろう。リスナーサイドは音楽の聴き方への試行錯誤、そして多くのアーティスト作品への価値に対して還元するなにかしらの配慮が必要ではないかと感じる。

アーティストサイドはどうか、音楽を生産消費の繰り返しではなく、そのものの価値をもっと高めて頂きたいと切に願う。世界”基準”ではなくても、世界へ堂々と出せる深さのある名曲や作品が多くまた生み出され続けることを願う。

▼ This week’s Select Music